ひとりぼっちだった虎の話
森にティグルフという、白い虎がいました。ティグルフは体が大きかったので、他の動物たちからは、怖がられていました。 でも、ティグルフには他の動物を怖がらせるようなつもりはありませんでした。他の皆と仲良くしたいと思っていて、空を飛んでいる鳥たちや、他の動物たちに声をかけたりしました。けれど、大体は、逃げられたり、知らんぷりをされてしまうので、ティグルフは、いつもひとりぼっちでいるのでした。 ある日、ティグルフがひとり寂しく日に当たっていると、1羽の鳥が空から降りてきました。羽に傷がついて、飛べなくなってしまったのです。 「鳥さん、大丈夫かい?」 とティグルフは聞いてから、鳥の傷ついた羽に、やわらかい葉をあててあげました。 鳥はびっくりして声も出せませんでした。それでも、礼を言わないのは悪いと思って、恐る恐る、 「ありがとう」 と言うと、ティグルフは嬉しそうに 「どういたしまして」 と言いました。 それからしばらくして、ティグルフのもとに一通の手紙が届きました。 手紙には 「白い虎さんへ この前は、どうもありがとう。おかげで傷は良くなりました。この前のお礼をしたいので、明後日、私の家までいらしてください。とっておきのお茶をご用意して待っています。 鳥より」 と書かれていました。 ティグルフはこの手紙を読むなり、嬉しくって、飛び上がりそうになりました。 明後日が待ち遠しくって仕方ありませんでした。 いよいよ、ティグルフが鳥の家にお呼ばれされた日になりました。 空はとても澄み渡っていて、ティグルフはウキウキしながら、一等毛並みを良くして、そして、鳥の家まで行きました。 家につくと鳥がやってきて、 「よくいらっしゃいました」 と言って、テーブルまで案内してくれました。 鳥は、良い香りのするお茶とクッキーを出して、 「この前はどうもありがとうございました」 とにこりと笑ったかと思うと、少ししょんぼりとして 「私は虎さんのことが怖くて、いつも知らんぷりをしていたんだ、この前もちゃんとお礼、言えなくてごめんなさい」 と言うのでした。 それを聞くと、ティグルフは 「今も怖い?」 と聞きました。鳥が、いいえ。と言ったので、ティグルフは 「じゃあいいよ。ぼくは、そんなことよりも、君とお茶を飲めていることがたまらなく嬉しいんだ」 と笑いました。それから、 「ぼくはティグルフ。鳥さんの名前は?」 と聞きました。それで、鳥も笑顔になりました。 「私はターべ。私たち、良い友達になりそうだねぇ」 「うん、僕もそう思う」 それから、ふたりは、お茶を飲みながら、好きなものや、嫌いなことなど、たくさん話しをしました。 星が綺麗な夜になりました。そろそろ帰らなければなりません。 「じゃあ、また会おう。ターべ君」 「またね、ティグルフ君」 二人はまた出会う約束をして別れました。 ティグルフは、この日から、もう一人ぼっちではなくなったのでした。